沖縄戦晩発性PTSD蟻塚亮二 タイトル画像

1、はじめに

みなさんこんにちは、月刊 精神分析 編集部Aです。

既刊の月刊精神分析で「2013年10月号 沖縄戦による晩発性心的症候群」を取り上げた。

上記の「月刊精神分析」で登場人物として取り上げた蟻塚亮二精神科医から「統合失調症とのつきあい方 闘わないことのすすめ」と「沖縄戦と心の傷 トラウマ診療の現場から」の二冊を献本いただいた。

偶然、ネット上の検索結果として「2013年10月号 沖縄戦による晩発性心的症候群」がヒットしたらしく、わざわざ蟻塚精神科医から編集部へ連絡をいただいた・・・と言う経緯。

Google検索で「沖縄戦 PTSD」を入力すると「2013年10月号 沖縄戦による晩発性心的症候群」がトップ表示される。

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おりしも、今年は敗戦から70年目の節目、オスプレイの実践配備、辺野古への基地移転問題で揺れ続ける「沖縄」、福島の東電原子力発電所事故から4年。こうしている内にも精神的または肉体的に大きな傷を負いPTSD(心的外傷後ストレス障害:Posttraumatic stress disorder、PTSD)を発症し苦しんでいる人々がいるのである。

今月の月刊 精神分析は蟻塚医師からの献本から心の病をテーマにする。

ご意見ご感想は
lacan.fukuoka@gmail.com
でお待ちしています。

2015年平成27年11月30日

月刊 精神分析 編集部A

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2、登場人物

蟻塚亮二

蟻塚 亮二(ありづかりょうじ)
1947(昭和22)年福井県生まれ。
高校時代は水泳の東京五輪強化選手だった。
弘前大医学部卒。
青森県弘前市の病院に勤務し、精神鑑定、労災認定の仕事にも多く携わる。
30代で大腸がんとうつ病を発症。
50代で2度目のうつ病発症を機に2004年に沖縄へ。
沖縄協同病院心療内科部長を務める中で、沖縄戦の高齢者たちのPTSDの問題を報告し、注目を集める。
2013年4月から福島県相馬市のメンタルクリニックなごみ所長。
日本精神障害者リハビリテーション学会理事
欧州ストレストラウマ解離学会員
著書:「うつ病を体験した精神科医の処方せん
統合失調症とのつきあい方 闘わないことのすすめ」(いずれも大月書店)
誤解だらけのうつ治療」(集英社)

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3、統合失調症とのつきあい方

蟻塚医師がかかれた「統合失調症とのつきあい方 闘わないことのすすめ」に目を通した。

統合失調症やうつに関しては、

2013年04月号 ブラックジャックによろしく
2012年03月号 パニック障害
2012年01月号 ツレがうつになりまして2。
2011年10月号 ツレがうつになりまして。

でもテーマに取り上げてきた。

私自身、思春期からストレス性の皮膚病を発症したり、軽いパニック障害を経験したりしていたので「なぜ、自分の心身にこんな事が起こるのか?」と言う問いをし続けた結果として精神分析的対話治療方法に興味と関心をよせ現在に至っている。

過去10年近く、精神分析的視点から色々な事件の経緯や、人の生き様を眺めて来た。その度に多くの確信を得たり、人生上の疑問が解けたりした。精神分析的視点を持つと言う事は、知っててよかったと思う側面もあれば、知らなければよかったと思う部分もある。

関連本を読む時には「何かしら怖いもの見たさ」的な感情がいつ傍にあるような気がする。

さて、蟻塚医師の「統合失調症とのつきあい方 闘わないことのすすめ」にはどんな「確信」や「解」があるのだろうか?

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4、統合失調症とのつきあい方(レビューと雑感)

第一章:統合失調症とは何か
第二章:統合失調症からの回復

蟻塚先生のユーモアに富んだ文章は大変親しみが湧き読みやすい。理論ばかり先行して「理屈はそうなんだろうけど・・」と??マークが多発する他書とは異なる。

先生の豊富な臨床体験(失敗も含む)を披露されており大いに参考になった。読み進めていく内に「この先生の言っている事は多分正しいのだろう」と納得させられる。

蟻塚先生は精神科医であって、カウンセラーでもなく精神分析家でもないので、当然、治療の一手段として「薬」も使用する。

精神科に通って強い精神安定剤を飲ませれて。頭がボーッとし、涎(よだれ)を垂れ流している人を見ると「精神科で処方される薬って危ないのではないか」と思うが薬には副作用が付き物なので、処方された薬が自分の体質にあうのかあわないのかよく相談する事。医者と患者のコミュニケーションが大切なのだなと再認識させられた。

現実に、患者さんが「うつ」で医者に通って、ある薬を処方されて、生活上支障のある症状が抑えらるのなら何も問題ないわけで、患者が通院する時間的リスクや薬代を負い続けて社会生活を全うしていけるなら、それはそれで結構な事だと思う。

先般の池袋の自動車暴走事故の容疑者の医師は、事故を起こす前に、薬を飲み忘れたと言う話が出ていたが、事の真偽は定かではない。

池袋の車暴走事故、運転の男にてんかんの持病

2015年8月18日11時58分

東京・池袋の繁華街で乗用車が暴走し、5人が死傷した事故で、自動車運転死傷処罰法違反の疑いで逮捕された男はてんかんの持病のあることが警視庁への取材で分かった。発作が引き起こす意識障害が事故につながった可能性があるとみて、同庁は18日朝、男を同法の過失運転致死傷ではなく、危険運転致死傷の疑いで送検した。

逮捕されたのは、東京都北区王子3丁目、医師の金子庄一郎容疑者(53)。16日夜、池袋駅前で地下駐車場から地上に出た後、暴走し、歩道にいた5人を次々とはねた疑いがある。女性(41)が死亡し、男女4人が重軽傷を負った。

池袋署によると、親族や主治医の話から、金子容疑者にはてんかんの持病があることが判明。月に1度のペースで通院し、1カ月分の薬を処方されていた。主治医は署に「10年ほど前から通院している。服薬を怠れば意識障害が起きる可能性はあるが、薬を飲んでいれば運転は可能」と説明しているという。

一方、金子容疑者は「居眠り運転をしていた。気づいたらぶつかっていた」と供述しているといい、署は、持病や服薬と事故の関係を慎重に調べている。

さて、問題は、いくら薬を飲み続けても症状が改善されずに、社会復帰が困難であったり、日常生活を送っていく上で支障がある人達の場合である。

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5、蟻塚先生の考える「心の氷山モデル」

以下の図は、蟻塚先生の考える「心の氷山モデル」

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精神分析的表現では、向かって右の「意識下」が「無意識」となって、意識上に上ってくる「幻覚・妄想」の意識下の「心」がコンプレックス(複合観念体)として取り扱っていると解釈される。

コンプレックスがセミ身体化した「幻覚・妄想」に関しても、結局は自分が作り出したもの、または、もう一人の自分と解釈する事ができる。

精神分析のセラピーは対話療法で、コンプレックス(無意識)を言語化する事によって、無意識→意識化して、幻覚や妄想を治療しようとするものである。

蟻塚先生の幻覚・妄想の対処法を引用すると・・・。

統合失調症とのつきあい方 P.50

幻聴の起源が本人の心にあり、さらには毎日の生活や対人関係上のトラブルが、本人の心をつらくして、このつらさが外在化されて幻聴になる。とすれば、幻聴と闘うことは、形を変えた自分と闘うことになる。 「絶対に幻聴を消さなきゃ」と考えたり、幻聴をあってはならないものと考えるのは、ご飯を食べてはいけないとか、ウンコをしてはいけないと考えるのと同じだ。 毎日ぶつかる生活の困難にまじめに取り組んでいれば、困難を幻想という形で自分の体から、いっとき離して軽くしようとするのは当たり前のことなのだから。 だから幻聴とは闘うのではなく、「無視する、返事しない、聞き流す、知らんふりする」などの態度をとるほうがよい。原田は「幻聴への対処策」として30以上もの項目をあげている(文献14)「正体不明の声」(原田誠一、アルタ出版、2002年)

本人の心がけとして「無視する、返事しない、聞き流す、知らんふりする」で症状が軽くなっていくのならOK。ただし、上記の場合は、本人の心をつらくしている環境や人間関係をなんとかする方が根本治療といえる。

自分の心がけを変える事でもダメで、自分の環境も変える事もできないなら、精神分析の対話療法を試してみるのも一つの手段である。

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6、私と精神分析

私自身、精神的ストレスから原因不明の皮膚病を発症し、手かせ足かせをはめられた青年期を送った。今、振り返ると、自分が生まれ育った環境が最初から自分にストレスを感じさせやすい場所だったので仕方無かったと受け入れている。

35歳を境に自分の生活環境を自分の意志で見直し、心の健康を取り戻し、体も健康となった。就業する制限もなくなり、思う存分働く事もでき、経済状態も良くなった。

思春期から青年期にかけて、思うように生きられない状態が長かったせいか、物事を深く考え、なぜそんな事になったのか考える癖がついた。

また世の中が情報化するに伴い、広い世の中から色々な思想や考えを知り、取捨選択する事が出来る様になった。

そんな中、医者でもないのに人の心の病を治療する方法としての精神分析学を巡り合った。もし、もっと早く、この学問の存在と中身を知っていれば、もっと自分の思春期から青年期を華のある時代として過ごせたのにと大きな後悔をしている。

『バック・トゥー・ザ・フューチャー』ではないが、過去は変えられないが未来を変える事はできるのだから。

今、生きている私たちの世の中は一体どこへ向かっていくのだろう。

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7、私を取り巻くこれからの世の中

経済はグローバル化し、面倒なSNSが広まり、ますます効率化が優先される世の中となり、人の心のありさまはよりいっそう置いてけぼりにされていくのだろうか?

一部、私が住んでいる福岡市の事を書き留めておきたい。

人口

人口は150万人。人口推計上2020年までは人口は増え続けるらしい。現在は九州各県からの人口の流入もあり増え続けて、来年か再来年には神戸市の人口を抜く予定。

高齢化、人口減少、移民

2020年以降は寿命で亡くなる自然減の数が流入数を上回るので、更なる高齢化、人口の減少化が進む事になる。緩やかな外国人労働者の流入がおこる。すでにコンビニのレジは韓国人と中国人の日本語検定有資格者の仕事になっている。

住環境

40年前1970年代は木造の平屋の家、長屋が主流の住まいであったが、現在はタワーマンションが主流である。一世帯当たりの家族数もすでに2.0を切っている。すなわち、一人暮らしの人が多くて、住環境の中で家族と言う概念がもはや少数派となっている。


商業・小売

昔は、個人商店の商店街が各地域に普通にあって、地域の住民間では「この子は何とか商店の次男の太郎君」という子どもの顔と社会的立ち位置がイコールで認識できていたのだが、今や商店街と個人商店は壊滅。イーオンとマックスバリュとゆめタウンとトライアルとルミエールでドラッグイレブンで事足りてしまう。

子どもは、家と学校と習い事とコンビニ間の移動が主生活となる。

消費税

既に閣議決定されており2017年04月から10%。それから数年を待たずして15%。現在でもEUに加盟するには消費税15%が必須。

雇用・日本企業のあり方

既に、終身雇用、年功序列制度は崩壊。ますます成果主義が求められ、じっくり人を社内で育てようなどと言う余裕はなくなる。今でも名だたる企業がブラック企業として告発されている・・それは氷山の一角でしかない。

まとめ

家庭でも、学校でも、会社でも、社会でも、よい自我を育て、よい人間関係の中で、幸福感を感じながら生活していくのは大変な事に・・・。自分を捻じ曲げながら生きていくのは大変苦しい事です。

精神分析家の役目

クライアントをよく観察し、習得した知識を駆使し、僧籍無き僧侶として、クライアントの足元を照らし、長い人生の付き添い人として、そして、言葉のプロフェッショナルとして、決して機械にとってかわられる仕事ではない事を証明する。

就業者の49%「将来、機械や人工知能で代替可能」

12月2日 14時43分

10年から20年後には、今、日本で働いている人の49%の職業が、機械や人工知能によって代替することが可能だとする分析を民間の調査研究機関がまとめました。技術の進歩によって近い将来なくなる仕事があるのか、関心を集めそうです。
この分析は、野村総合研究所がイギリスのオックスフォード大学の研究者と共同で行ったもので、601種類の職業について、技術の進歩によって将来、機械や人工知能が代替できる確率を計算しました。
職業ごとに必要な知識や技能を数値化したデータを基にコンピューターで分析した結果、10年から20年後には235種類の職業が代替できる確率が高いと分析されました。
具体的には、スーパーの店員や一般事務員、タクシー運転手、ホテル客室係、警備員などとなっていて、これらの仕事をしている人は合わせておよそ2500万人に上り、今、日本で働いている人の49%に当たります。
一方、医師や教師、美容師、それに観光バスガイドなど、人とのコミュニケーションが重要な仕事や、映画監督、音楽家など創造性が特に必要とされる仕事は、機械が代わって行うのは難しいと分析されています。
この分析では社会情勢の変化などは考慮されていませんが、技術が進歩し機械の導入が進むことで、近い将来なくなる仕事があるのか、関心を集めそうです。
野村総合研究所の寺田知太上級研究員は「今後、労働人口が減っていくなか、人手不足をテクノロジーで解決する可能性を示したもので、議論のきっかけにしてほしい。将来は、機械に多くの仕事を任せる一方、人は創造性やコミュニケーションがより求められる仕事を担うようになるのではないか」と話しています。

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8、沖縄戦と心の傷 トラウマ診療の現場から(レビューと雑感)

フロイトが無意識を発見して100年。科学的が人の心の領域に踏み込んでまだ100年の歴史しかない。

もう10年近く、精神分析学と言う切り口で所謂心の病と称されるものに関わってきた。時折発生する不可思議な事件や事故を精神分析的視点で解説・考察した。

心の問題はアナログであって、試験管の中のテスト溶液の濃度をセンサーの数値で測って、仮説の正しさを証明する事はできない。

個々人が抱えるトラウマは千差万別で、クライエントの家族構成、社会情勢、人間関係、職業、性別、既婚未婚、云々の条件がすべて一致する人はいないので、広い世の中にたった一人のクライエントの語りは、たった一つの語りであって、他者のセラピーを流用する事はできないのである。

そんな中、蟻塚医師の著書「沖縄戦と心の傷 トラウマ診療の現場から」は診療所の現場の医師が心の病を抱えた患者をともに病気の治療に取り組んだ結果、みえてきた沖縄戦と心の傷の関係をまとめた本である。

沖縄戦

(おきなわせん、沖縄の戦い)は、太平洋戦争(大東亜戦争)末期の1945年(昭和20年)、沖縄諸島に上陸したアメリカ軍を主体とする連合国軍と日本軍との間で行われた戦いである。連合軍側の作戦名はアイスバーグ作戦(英: Operation Iceberg、氷山作戦)。琉球語では、Ucinaaikusa (ウチナー(沖縄)いくさ(戦、軍)、の意)ともいう。 太平洋戦争において、日米の最大規模で最後の戦闘となった。

今から70年前の終戦直前の沖縄での戦争。非戦闘員を巻き込んだ壮絶な戦闘である事は誰もが知っている事だが、幼児の頃、戦争に巻き込まれたおじいちゃんやおばあちゃんがトラウマでPDSDを発症しているケースが多くあると言う。

ある歳を境に急に不眠症となる。花火の音を極端に怖がる。戦争中の悲惨な記憶がフラッシュバックすると言う。

蟻塚医師はこれを「晩発性PTSD」と診断した。

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9、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する

国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。

日本は多くの代償を払って戦争を永久に放棄した。

戦争はしてはいけない事。

多くの人の幸福な生活を壊し、心も体も蝕む。

平和で安心して暮らせる社会を守っていかなければならい。

その根底に教育があると思うのだが。

人の心の勉強がなされないのは悲劇的な事だと思う。

お金との付き合い方も知らずに、いきなりクレジットカードを持たされるのは危険な事だと思うのと似ている。

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10、おわりに

今月の月刊 精神分析は、蟻塚亮二精神科医からいただいた「統合失調症とのつきあい方 闘わないことのすすめ」と「沖縄戦と心の傷 トラウマ診療の現場から」の2冊の本の感想の雑感を述べてみた。

多くの生の症例が掲載されており、大変勉強になりました。読者のみなさんも本屋さんやamazonでチェックされる事をお勧めします。

ご意見ご感想は
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平成27年11月30日

月刊 精神分析 編集部A

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11、Webマガジン月刊精神分析&分析家ネットワーク



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 精神分析(セラピー)を受け、インテグレーター(精神分析家)を目指し理論を学んだ人たちが、東北・関東・関西を中心に実際にインテグレーターとして活動しています。  夏には、那須で恒例の「分析サミット」が開かれ、症例報告・研究などの研修会も行っています。  私たちインテグレーターを紹介します。(敬称略)  メールに関して、☆を@に変換したメールアドレスにメール送信願います(スパムメール対策)

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