ガンと胃カメラ体は心のモニター2 タイトル画像

1、はじめに

このサイトは加筆予定です。すみません。^^

最近、何かと忙しく時間をとってわざわざ書店を訪れ何気なく平積みの新刊を手にとって立ち読みする機会もすっかり減ってしまった。必要な本が手元になければパソコンの中でAmazonで検索し、新刊でも中古本でもマウスのクリック作業で入手できてしまう。黙っていても自宅にいれば佐川急便さんが配達してくれる。急速に書籍の電子化が進んでいけば、紙媒体の書籍を購入する機会も減り、書籍データを購入するのが当たり前・・そう、そんな事が当たり前になる時代ももう目前である。そうなると、個人が書籍を作成しPDF化したデータを手数料を払ってAmazonに登録し、電子データの売買が前提の書籍流通システムが確立する事となる。

昨日「プラチナデータ」と言う映画を見た。時はそう遠くない近未来、全国民のDNAデータを国家が管理し、犯罪捜査に活用すると言った切り口(原作:東野圭吾)。邦画の未来映画としては凝ったつくりで、街中の防犯カメラの画像データを顔認識システムで解析し、容疑者を追跡するシーン等は、素直に世界観に引き込まれる描写だった。

書籍購入から容疑者追跡まで、コンピューターとインタネット通信網の上で劇的に変化していく・・・2020年代、2030年代、我々と取り巻く環境はどの様に変化していくのだろうか?多分、想像を絶する事になっているだろう。

さて、本月刊精神分析では「ブラックジャックによろしく」を取り上げる。いつものコンビニに立ち寄り本棚に目をやると「ブラックジャックによろしく 精神科編 佐藤秀峯 世間、マスコミ、医者・・誰が精神障害者を差別しているのか?(2013年3月12日 第1刷発行)」と言う本が目に入った。本の後ろにはこう記述してある。・・「この本はブラックジャックによろしく9巻80話から11巻107話までを、一部修正を加え再収録したものです」と。ところが、この本に収録されている107話で精神科編が完結しているかと言うとそうではない。確認すると精神科編は、11巻(108話~109話)、12巻(110話~118話)、13巻(119話~127話)まで続いており、結局80話から127話まで48話分を読まないと話の結末がわからないのだ。「なぁーーんだ、この本は、出版社とコンビニが結託して誕生した中途半端な暇つぶし漫画本なのかぁ」と言う捉え方もできなくないのだが、話自体は大変興味がわく内容で、結局、最終的にはわざわざデジタル版をダウンロードして完読する事となった。今号の月刊精神分析で取り上げる事になった次第である。

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2、ブラックジャックによろしく

詳しくはウィキペディアをみていただきたいのですが・・・

ブラックジャックによろしく

佐藤秀峰による日本の漫画作品、またそれを原作とした同名のテレビドラマ。研修医が目にする日本の大学病院や医療現場の現状を描く。医療監修は長屋憲。2006年1月まで、講談社『モーニング』誌上で連載された。2002年第6回文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞受賞。本作は2003年にTBS系列でテレビドラマ化された。臨床研修制度の不条理さ、医局の都合により歪められる医療、健康保険制度の矛盾、患者や家族との葛藤などを経て主人公は成長してゆく。


・・・となっています。

色々な解釈がありますが、手塚治虫氏の「ブラック・ジャック」のオマージュ作品とみていいと思います。ブラック・ジャックでは主人公のブラック・ジャックこと間 黒男(はざま くろお)が天才外科医としての才能を発揮し、難しい手術をやってのける過程での人間関係や社会的な利害関係、そして命の重さを問いかける作品であったのに対し、佐藤秀峰氏は主人公である斉藤 英二郎(研修医)を通して、医療界の矛盾を浮き彫りにしています。

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3、ブラックジャックによろしく - booklive.jp

本作品の「ブラックジャックによろしく」はパソコン上で無料で読むことができます。私が本稿で書いた「電子書籍化」がされており、かつ、実験的な試みで、購読方法として、電子データを購入する手続きは行わなければならないのですが「¥0」で購入するので、結果としてタダで読める事になります。

出版側の思惑としては、紙媒体の書籍ではなく、電子データを購入してパソコン上やタブレット端末で「本を読む」事を体験して欲しいと言う思惑があるのでしょうか?

何れにしても無料で質の高い漫画を読むことができるのであれば、それは嬉しい事なので皆さん是非体験して欲しいと思います。

Googleで「ブラックジャックによろしく」で検索していただければ「booklive.jp」に簡単にたどり着く事ができるでしょう。

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4、ブラックジャックによろしく 精神科編

今回私がコンビニで購入した「ブラックジャックによろしく 精神科編」は業界でいうところの「コンビニコミック」という形態の本である。

出版不況にあえぐ業界として、小売最前線のコンビニの棚に自社商品を陳列できるのは願ったり叶ったりで、コンビニ弁当と一緒に購入しても\1000以内を基準に値付けされていると言う。

先述したが「ブラックジャックによろしく」は、佐藤秀峰による日本の漫画作品である。氏の創作作品である。作り物である。しかし、読者を意識して読み物として成立する物語やリアルティ、そしてテーマを内包しているのだ。

まずは登場人物を紹介する。

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5、登場人物(注:ネタバレ)

物語のプロローグ

永禄大学医学部卒のエリート、斉藤英二郎は永大附属病院の研修医。月給3万8千円のため、私立医大で当直のアルバイトもこなすうちに、実際の医療現場と自らの理想との違いに気づき、苦悩し始める。「医者って一体なんなんだ・・・」。第一外科、NICU(新生児集中治療室)、小児科、そして、がんを扱う第4外科での研修を経験した斉藤。なぜ医者になったのか、どういう医者になりたいのか、煩悩を重ねるが答えは遠く・・・。そんな斎藤の新たな研修先は・・・?

斉藤英二郎(さいとうえいじろう)

永大附属病院の研修医「良い医者になりたい」という思いから、患者に対しては常に全力で向き合う。その誠実さゆえに医療システムの問題点にぶつかって悩み、頭を抱える。時に医局や教授との間で摩擦を起こすことも。後述の門脇氏の担当医に伊勢谷医師から指名される。

門脇耕太郎(かどわきこうたろう)

東京都杉並区阿佐谷(あさがや)在住。読捨新聞社の記者。10年近く精神の問題に取り組む。精神病患者に対する差別や偏見を問題視している。伊勢谷医師とは三年の付き合い。社内では異端扱い。アルコール依存症(40代の男性に限ると7人に1人はアルコール依存症)患者として永大附属医院精神科に入院し潜入取材を試みる(精神科の世界を新聞でシリーズで紹介するのが主目的)。ジョン・レノンになりたいと言う(意味は漫画のストーリー上に明示)。

伊勢谷(いせや)医師。

永大附属医院病棟医長。斉藤の指導医。精神科の病気は手術や薬で治る種類の病気ではないと認識している。結局、精神科の患者というのは、他人とうまく係る事の難しい人達・・言い換えると精神障害とは人と交わる事の障害なんです斉藤に語る。いまだ社会には精神障害者に対する差別が根強く残っています。差別の原因は精神障害者の社会の無知である。・・と劇中で述べる。

小沢くん。

永大附属精神科の入院患者。大学を卒業するものの就職も決まらず、コンビニでアルバイトとする。コンビニオーナーより万引き犯の疑いをかけられ、本当に万引きしてしまう。その後、統合失調症を発症し患者として入院。スキを見て病院から逃げ出す「僕はキチガイなんかじゃない」。伊勢谷医師は小沢君には休息と平穏が必要だと述べている。劇中で、早川小百合と出会うまでは恋愛経験がなかった。退院後、「僕、気づいたんです。僕に行きたい場所なんてない・・。僕がいたいのは早川さんの隣です。僕は飛べる」と言う言葉を残し、永大附属病院の5階から飛び降り自殺を図る。

小沢くんの母。

小沢くんが統合失調症であることを周りにひた隠しにし、早期退院を都合の悪い事と考えている。息子の為に退院後の職場として有機野菜の販売者を見つけるものの、一方的に採用を取り消される。劇中では子離れできない母親として描かれている。

早川小百合(はやかわさゆり:20歳)。

母が離婚した為名前が変わる。旧姓:磯山。自称:ウェンディ(ピーターパンに憧れる少女の名前)。91話から登場。永大附属精神科の入院患者。小沢くんと同じ統合失調症を患っている。両親の離婚の為、小百合は転校生となる。新しい学校に馴染めず、以前の学校の友人には連絡がとれなくなり孤立する。15歳で初めて家出をする。家出中、複数の男性を性的関係を持ち妊娠中絶を経験する。問題行動(家庭内暴力)の為、精神科に入院させられる。

早川小百合の母。

早川小百合が15歳になる前に離婚して連れ込みホテルで清掃の仕事を生業とする。早川さんの家庭は母子家庭と言う事になる。

志村秀治(しむらしゅうじ:37歳)

11月13日午前10時。東京の小学校で児童殺傷事件を起こす。児童8人死亡。精神科への通院歴有り。99年3月、△△小学校の技能員を務めていた時に同僚に精神安定剤入りのお茶を飲ませて逮捕。精神安定剤を10回分1度に飲んだと供述。「精神安定剤とは文字通り精神を安定させるためのもので、それによって幻覚や妄想が激しくなったり暴力に結びつく事はほとんどない」と伊勢谷医師は指摘している。それによって、志村が起こした事件は病が原因ではない可能性を展開。精神障害者を装えば無罪になると思ったのではないか?キチガイのフリをすれば何をやっても許されると。それをきいた新聞記者の門脇耕太郎は自社に詐病の可能性を伝える。

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6、登場人物(その2)

惟能創理(いのうそうり)
日本初のインテグレーター(精神分析家)
編集部Aのスーパーバイザー 。

1951(S.26)年 埼玉県熊谷市に生まれる
1992(H.04)年 大沢精神科学研究所設立
1992(H.04)年 道越羅漢(みちおらかん)となのる
2008(H.20)年 LAKAN精神科学研究所に名称を改める
2008(H.20)年 惟能創理(いのうそうり)に改名する
著書紹介:
月刊精神分析 2009年01月号 運命は名前で決まる
月刊精神分析 2010年01月号 心的遺伝子論 産み分け法

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迎意愛近影

迎意愛(むかいあい)
精神分析家。シニフィアン研究所(埼玉県上尾市)主宰。
1954年和歌山県生まれ
2011年10月より埼玉県在住。二女の母。
奈良教育大学卒業するも、教師にならず、営業職に就く。結婚、義母の介護。
物心ついた時から生きる意味を問いかけ、38歳の時、精神分析に出会う。
精神分析により、自己を知ることで、生きる意味を見出せると確信し、惟能創理氏に師事する。
女であることの素晴らしさと重要性を痛感し、自らも精神分析家(インテグレーター)となる。
自らの体験と「オールOK子育て法」を引っさげ、女たちよ賢明であれと全国を行脚するべく奮闘中。
連絡先:signifiant1@gmail.com

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安朋一実近影

安朋一実(やすともかずみ)
精神分析家。ラカン精神科学研究所(滋賀県大津市)主宰。
1958(S.33)年4月22日生まれ。
出身:滋賀県大津市。二女の母。
神戸親和女子大学児童教育学科(兵庫県神戸市)卒業。
会社勤務の後、結婚し専業主婦になる。
二女の子育てに悩み惟能創理先生の精神分析治療を受ける。
インテグレーター(精神分析家)養成講座を受講の後、独立開業。
現在、新進気鋭の分析家として、引きこもり不登校の子供を持つ母親を全力で支援している。
同研究所は「京都府ひきこもり支援情報ポータルサイト」の支援団体として登録。
メルマガ発行:子育てメールマガジン 育児法 引きこもり 家庭内暴力 非行 不登校
連絡先:lacan.msl@gmail.com
QR-CD






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編集部A(へんしゅうぶえー)
月刊精神分析(げっかんせいしんぶんせき)編集部員。
ラカン精神科学研究所福岡支所
1963(S.38)年3月12日生まれ
出身:福岡県福岡市。
コンピューター会社のシステムエンジニア。食品工場の生産管理業務に従事。
飲食店の経営、飲食店の営業職、旅客運送乗務員を経た後、月刊精神分析編集部。
宗教色の強い家庭に生まれ育つ。
中学校1年生の時にクラスの数人からいじめられ転校した経験がある。
二十代の頃、原因不明の疾病に苦しむが転地療法にて完治した経験から、心の作用に興味を持つ。
ひょんな切っ掛けから「精神分析」の世界を知り、約三年半色々な書籍を読み漁る。

現在「月刊精神分析」の編集に関わりながら、惟能創理先生のセラピーとインテグレーター養成講座を受けている。

性格分析:自己分析、コンピューターのSE(システムエンジニア)をしてきただけあって、緻密な作業ができるA型(血液型)人間である。自分の部屋はちらかっていても許されるのだが、漫画本の1巻から・・はきちんと順番通り並んでいないと気が済まない。物事は手順を考えて、1から順番に進めていく。よって「適当にやってみて駄目でした」という事は出来ない人で、やるからには成果が出ないとかっこ悪いと感じ、失敗を恐れるタイプである。
連絡先:lacan.fukuoka@gmail.com
再来年を目途に、精神分析家としての独立開業を画策中。
心のインテグレーター(統合者)名は、進志崇献(しんしそうけん)
・・精神分析家として活動する上でのペンネームの様なものだが、自分では自己イメージがわかなかったので惟能創理先生に命名してもらう。意味は見ての通りで「気高いものをたてまつる事を志して進む」という事。過去、常に支配され主体性を奪われ翻弄させ続けられた私が主体性を取り戻して生きていくには「いい感じの名前」だと思っている。
精神分析家としての名前は「進志崇献」。屋号は「ラカン精神分析研究所@福岡:Lacan Psychoanalysis Laboratory@Fukuoka」で検討中。当面、活動の中心は140万都市の福岡になりそうだ。

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7、ブラックジャックによろしく 予備知識(精神科編)

永大附属病院精神科
病床数60床(閉鎖病棟)
急性期から回復期まで3ヶ月入院が基本

扱っている病気は主に統合失調症、そううつ病、薬物依存症、その他様々な病態の患者さんが一つのフロアに入院している。

現在、日本の病院に入院している患者全体の4分の1は精神病院に入院。精神分裂病は国や人種に関係なく世界中どの民族でも大体100人に1人がかかる。この数字は胃潰瘍になる人と同じ。病気になる原因は不明。現在、分裂病の名前は統合失調症に変更。

統合失調症:この病気になると幻聴が聞こえたり、誰かに見張られている気分になったり自分の思考が周囲にバレているような気がしたりします。その結果、自分が巨大な組織に狙われている妄想にとらわれたり、周囲には理解しがたい行動を取ってしまったりする。統合失調症とは自我が失われる病気である。

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8、ブラックジャックによろしくのテーマ

ブラックジャックによろしくにはいくつかのテーマがある。

1、斉藤君研修医と伊勢谷医師との関わりから、日本の精神科医療の問題点を定義。
2、門脇新聞記者を窓口としたマスコミの精神病報道の問題点の定義。
3、附属池田小事件をモチーフにした、精神障害者と犯罪の関わり。

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9、精神科はキチガイがいくところ

さて、ここからいよいよ本題である。みなさんは精神科ときいてどんなイメージを持つだろうか?

所謂、気違い(キチガイ)になった人がいくところと言う捉え方が一般的ではないだろうか?気違いと言う言葉自体も、差別用語とされ放送禁止用語となっている。まともな思考ができなくなった人が受診し、よっぽどな事がない限り、二度と出てこれない・・気がふれた人の収容所。世間一般では親族に精神病の患者がいても、その事実はひた隠しにされ家族からも社会からもはじかれる。

私のこういう認識は漫画「ブラックジャックによろしく」の中ではこう表現されている。

劇中のネームの抜粋

日本には措置(そち)入院と言って危険な状態の精神患者を法的に入院させられる制度がある。措置入院の対象となるのは精神障害者の中でも自殺したり他人を傷つける可能性の高い者だけだ。本人の意思に関係なく強制的に入院させるわけだから、そこには厳格な基準がある。志村な1日しか統合失調症の治療薬を飲んでいない。なぜなら治療が必要な状態ではなかったからだ。加えて3週間で退院している。本当に重度の統合失調者症ならありえないスピードだ。志村は精神病を演じるまでもなく、行政と医療によって精神障害者に仕立てあげられたんだ。

日本人の中で精神障害者と言われる人は人口の1.7%。しかし、警察に捕まった犯罪者のうち精神障害者は0.6%しかいない。つまり精神障害者達は放っておけば犯罪を犯すような存在ではない。(後述:ですが放火や殺人といった重大犯罪に限って言えば精神病患者の犯罪率は健常者の17倍も高い。)

志村が起こした事件によって「医療観察法」の成立の可能性について言及している。医療観察法:犯罪を犯した精神障害者は施設に収容して、再犯のおそれがなくなるまで治療する。言ってしまえば1度罪を犯した精神障害者を危険人物とみなし生涯施設に隔離する事も可能にしてしまう法律です。

今まで日本人は精神障害者を病院に閉じ込め治療と称して隔離してきました、精神障害者について人前で語る事をタブーとし患者の家族の多くもそれを望みました。家族は気の狂った身内を人の目から遠ざけるために金を払い続け、病院は金を生み続ける患者を固定資産と呼びました。精神病院は一度入院したら出られない、それがひと昔前の常識です。人目に触れる事もなく語られる事もない・・まだ有効な治療法があまりなかった事もあります。患者は狭くて不潔な部屋に何人も押し込められ、ろくに食事も与えられない劣悪な生活を強いられました。そうする事で病院は入院費を浮かせて収入を増やし、患者は、ただ症状を悪化させていきました。つまり、この壁の向こうにいるのは、日本人の差別意識が生み出した犠牲者です。

(中略)

1960年代アメリカで精神病院が解体されました。国がシステムを変えたんです。さっき見たような本当に重度の患者を除いて入院患者のほとんどを退院させてしまったんです。当時のアメリカは今の日本と同じく精神障害者の受け皿が社会に整っているとは言い難い状況でした。行き場をなくした精神障害者の多くはホームレスとなり自殺する人も少なくありませんでした。しかし結果として精神障害者は大きな社会問題となりました。社会が動いたんです。様々なボランティア団体が立ち上がりいくつもの支援制度が整備されました。それから30年が経った今も・・・アメリカは精神障害者が社会の中で生きる方法を考えています。

(中略)

日本の精神病院には本来、入院の必要のないのに入院している人がおよそ40万人います、退院しても行き場のない人、家族の元にすら居場所がなく、病院にいるしかない人が40万人もいるんです。

(中略)

統合失調症とは脳と言う臓器の病気です。世界中のどの国でもおよそ100人に1人がなる病気で、原因についてはまだはっきりとわかっていません。つまりあなたがなってもおかしくないし、私がなってもおかしくない。しかし両親とも統合失調症であった場合、子供も病気になる割合は4割、あるいは一卵性の双子の1人が病気だった場合、もう1人も病気になる確率は5割。アメリカは先住民族や精神障害者に対して、かつて断種を目的とした去勢などの強制手術を行いました。あるいはドイツでは第二次世界大戦中ナチスがユダヤ人と共に精神障害者などを虐殺しました。この日本においてもわずか8年前まで、優生保護法の名のもとに国が精神障害者などの不妊手術を認めていました。その他に、強制不妊手術を行った国はスイス・オーストリア・ベルギー・イギリス・フランス・スウェーデン・中国・インド、あなたは正しいと言えますか・・?それらの国がしてきた事が・・。

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10、精神分析と統合失調症

精神分析的視点で「ブラックジャックによろしく」を読んでいて、小沢君や早川さんの様な問題を抱える当人や家族と精神分析家がどう関わる事ができるか?考えてみた。

劇中では小沢君や早川さんは問題行動(暴力行為、器物破損、家庭内暴力)をおこし、永大附属精神科の入院病棟(含:閉鎖病棟)の保護室に閉じ込められてしまう。症状が落ち着いてきたら、今度は4人部屋へ移され、だんだん症状が軽くなってきたら退院という流れになっている。もちろん、その間、必要なら精神安定剤などの薬物が投与される。

小沢君にしても早川さんにしても、大学在学中や高校生時代に問題を起こしたわけではない。小沢君はまじめな学生であったにもかかわらず就職できず、コンビニでアルバイト中に店長から万引きの疑いをかけられた事により統合失調症を発病。早川さんは、両親の離婚により生活環境が大きく変わってしまい孤立し家出。複数の異性と関係を持ち妊娠中絶を経験。その後、統合失調症を発病という設定になっている。

現代日本において、四年制大学を卒業したけど正社員になれず、非正規雇用者として働く人は普通にいる。1990年までは5組に1カップルの離婚率も、現在は3組に1カップルになり、近い将来、アメリカ並みに2カップルに1カップルが離婚する様になるのでは?と言われている。

更に、大学生の進路確定率は74.3%と報道されている。と言う事は、4人に1人は就職先が決まっていないと言う事である。

癌細胞と一緒で、心の病の素も人の心の中に内包されている。精神分析的には無意識(コンプレックス:複合観念体)と言われているものだ。普段の何気ない日常が続いている間は何も問題がないのだが、ひとたび何かのきっかけでスイッチが入ると、癌細胞が増殖する様に、病気が現れる。身体化(皮膚病など)する場合もあれば、幻覚や幻聴として心の病として表出する場合もあります。

1980年代の様に日本の経済が好調な時期は、表に出てこなかったものが、不況とデフレの時代になり、就職や家庭の在り様など日々の生活で日常的にストレスを感じるような生活を強いられる様な状況になると、無意識が心の病として表出するわけです。

さすがに、我を失って暴れている小沢君や早川さんに対して、対話療法(セラピー)はできませんので、その時点では精神分析家の出番はありません。

できるとしたら、退院してきた彼や彼女が再入院しないですむ様な環境を整え、一定の間隔でセラピーを行い、無意識を意識化し、自我を育てる事だろう。

小沢君や早川さん自身はどこにでもいる大卒のフリーターだし、親の都合(離婚)で生活環境の変化に翻弄される女子高校生である。

世間体ばかりを気にする母親に小沢君はイラつき失望しているし、生活を支える事でいっぱいいっぱいの母親に早川さんは「もっと構ってほしい」と思っている。

小沢君や早川さんには、明らかに「自己肯定感」や「自己承認」が不足している。正社員になれなくても、非正規雇用者でも人は人として生きていく。子どもはいつまでも親の所有物ではない。他者から容易に侵入されない強い「自我」を形成するのだ。

僧籍なき僧侶(精神分析家:心のインテグレーター)は今日も赴く。

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11、「生き延びるためのラカン」より

このサイトを作成するにあたって斉藤環(さいとうたまき)さんの「生き延びるためのラカン」を久しぶりに再読した。私の手元にある書籍は2006年11月24日初版第一刷発行、2006年12月28日初版第二刷発行となっている。専門書の類であるのにも関わらず僅か一月で重版がかかっているところをみると異例に売れた本なのではなかろうか?あの「秋葉原無差別殺傷事件」が発生するのが2008年06月08日なので、かなり古い本の様な気さえしてくる。にも関わらず、記述が古めかしく感じないのは人の心や精神の有り様は大して変わらない事の現れなのだろう。

本サイトの趣旨である精神分析的視点で「精神病」ここでは主に「統合失調症」を論じてみるにあたって、一般の人がわかる「言葉」で解説している文献を引用したかったのだが、統合失調症自体が得体のわからない精神病で、かつ、それを一般の人が理解できる平易な文で論じている稿など、ネット上のどこを探してもみつからず、結局は、今から遡る事、7年も前に発行された「生き延びるためのラカン」を本棚からひっぱりだすことになった次第である。

以下「生き延びるためのラカン」より、統合失調症を論じたところの一部引用である。Amazonで、文庫本が購入できるので、是非、精神分析やラカンに興味のある方は一読をお勧めします。

P.013より引用

電波系の人、ひらたく言えば精神病の人というのは、僕たちと同じ言葉を喋れなくなった人の事だ。すくなくとも、ラカンはそう考えていたし、僕もそれに条件つきで賛成する。ただし現実には、キミたちが精神病の患者と話をしても、ちゃんと普通に会話は成り立つと思う。ラカンが言っていることは、あくまでも理念的な精神病、つまりラカンにとって理想的に狂ってしまった人にだけ、完全に当てはまるだろう。僕がラカンに賛成なのは、そんなふうに、常に徹底して厳密に考え抜こうとする姿勢に対してであって、その言葉をそのまま臨床に持ち込もうとは思わない。まあ、当たり前のことだけど、念のため。

精神病の人の言葉は、どんなに表面上じゃ僕たちの言葉に似て見えても、本質的に「ちがう世界」の言葉なのだ。それがもっともはっきり示されるのが、「独語」の症状。まさに本人にとってだけ存在する世界との対話、それが独言だ。だから、たとえ精神病じゃなくても、独り言を呟き続ける人は、どこか僕たちに異様な不快感を与える。同じ世界にいるはずの人が、別の世界を背負って歩いているようなものだからね。

携帯電話もまったく同じこと。・・・

P.165より引用

前の章でようやく女とヒステリーの問題をすませて、なんとか一息ついたかな、と一瞬だけ思った。ところが、そうも言っていられないことに気づいてしまった。「精神病」が残っていたのだ。今まで神経症、性的倒錯、と解説してきて、まだふれずに残っていたのがこの精神病ということになる。なぜこれだけが残っていたのか。簡単に言えば、精神病の問題こそは、ラカンにおける最大の鬼門だからなんだね。

(中略)

ちょっと業界内部の事情を知らないひとにはわかりにくと思うけど、ここで精神病と呼ばれているのは、かつて精神分裂病と呼ばれ、いま統合失調症と名前の変わった病気を指しているといっていい。この病気、気がふれたひとをイメージするとしたらみんなが真っ先に思い浮かべるくらい、いわば狂気の代表格みたいな、かなりポピュラーな疾患だ。全世界的に分布していて、だいたい100人に1人はこの病気を持っているというくらい、ありふれた病気ではあるんだけど、いまだ原因不明、精神科医なら誰でもこの病気のことよく知っているけれど、けっこうみんな、てんでな捉え方をしていて、説明を聞いてもよくわからないかもしれない。体の病気みたいに、検査やなにかで目に見える形にできるような異常は何一つないので、みな自分のイメージで語るしかないんだね。

(中略)

さて、問題の統合失調症だ。この名前、昔の名前である精神分裂病よりは、ずいぶん病気のイメージに忠実な名前ということができる。なぜかって?そもそも人間のこころというのは、ひとつのまとまりに統合したがるという、強い傾向を持っているものなんだ。その統合が失調する。するとどうなるか。ひとつのまとまりへの志向が消えた結果、こころは大変な混乱に陥ってしまうんだね。たとえば自分の考えたことが、まるで誰かが喋っている声に聞こえたり(幻聴)、われ知らず独り言を喋っていたりするようになる。自分の行動も、それが自分の意思によるのじゃなくて、誰かに操られているような錯覚にとらわれたりする。あるいはまた、自分というものの境界がわからなくなって、考えたことが外にどんどん漏れてしまうように感じたり、逆に、他人の考えが自分の中に入り込んでくるように感じたりする。

なかでも有名なのは「自明性喪失」だ。これは、せんだって亡くなったドイツの精神病理学者、ブランケンブルクという人が指摘した「症状」だ。まあ、症状を言っていいかどうかは、むずかしいところだけど。彼によれば、統合失調症では、僕たちが「当たり前」と思っている感覚がなくなるか、衰えてしまう。常識や知識がなくなるわけじゃないんだけど、その根底を支えている、もっとしっかりした土台みたいなものが壊れてしまうんだ。だから、知識の問題というよりは、当たり前のことにまで懐疑が生まれてきて、身動きがでいなくなってしまう状態に近い。ほら、ムカデに「そんなにたくさんの足で、どうやって歩けるのか」と尋ねたら、とたんに歩けなくなってしまったという笑い話があるでしょう。考えなければ当たり前にできたことが、考えすぎるとできなくなってしまう、「自明性の喪失」っていうのは、こういう状態に近いと言えるかもしれない。

(中略)

患者はしばしば、石みたいに固まって一言も喋らなくなってしまう。これは「昏迷(こんめい)」という症状だ。はた目には何を考えているのかわからないけれど、このとき本人の意識は異常にはっきりしていて、後で聞いてみると記憶もしっかりしている。どうも一種の「金縛り」みたいになっているらしい。これなんかコンピューターでいえば、情報の入力過多でフリーズしてしまったような状況かな・「メモリがいっぱいです」という感じ。

(中略)

自明性の喪失もダブルバインドも、統合が失調したことから生じてくると考えられる。なぜなら、ここでそこなわれているのは、「文脈」だから。言われた言葉の意味を知識としては知っていても、文脈がわからなければ会話は成り立ちにくい。そして、人間の行動の大半は、実はこうした文脈にとことん依存しているんだ。前に別の本「文脈病」で書いたことだけど「文脈」っていうのは、言葉とちょうど反対の機能を持っている。文脈はものごとをつなぎあわせる連続性の感覚を意味するけれど、言葉は世界からものごとを切り出すための道具だ。おおざっぱな言い方になるけど、このごとを切り離す言葉に、言葉をつなぐ文脈が組み合わさることで、はじめて「意味」が生まれてくるわけだ。

(中略)

言葉がないところに文脈はないし、文脈がないところでは言葉も機能しない。どっちも不可分の関係にあるわけだ。こころの「統合」というのは、こうした「文脈」のことでもあるんだな。文脈は、それがいつでも一つだけだからうまくいくので、しょっちゅう文脈が複数あったりしたら、やっぱり判断したり行動したりすることはむずかしくなるだろう。
失調するような「統合」があるとして、それがどんなものかはわかっているのかって?

(中略)

ここで、ぜひとも「象徴界」のことを思い出してほしいな。象徴界というのは、言葉、もっと正確に言えばシニフィアンとして構造化されている。そう、そこにはある種の、確固たる構造があるんだ。ただ、それは簡単に地図や設計図が引けるような、わかりやすく目に見えるような構造じゃない。そうではなくて、むしろある種の秩序や計算式のように、抽象的なルールに基づいてなりたっている構造だ。いままでのレクチャーを読んでくれた人ならわかるよね。そう、こころを統合する構造とは「象徴界」のことなんだ。

象徴界は、ファルスを中心にして構造化された言葉のシステム、あらゆる言葉(=シニフィアン)は、隠喩(いんゆ)という連鎖をつうじて、すべてこの「ファルス」という、究極の象徴に関係を持っている。いっておくけど、これはもちろん、とてもよくできた仮説に過ぎない。CTスキャンだの脳波だのを用いたって、ファルスの位置なんて科学的には検証できっこないんだから。でも、こんなふうに考えると、まとまりを持たないかのようなこころについて、ある種のまとまりを持ってイメージしやすくなってくる。

ラカンは「精神病」(ここでは統合失調症とイコールと考えていい)について、象徴界が故障した状態と考えた。ラカンはこれを「父の名の排除」というふうに表現している。(後略)

ここでいう「父の名」とは

人間が、乳児から成長して自己を持つにいたる課程において、母の乳房が詰まっている乳児の口から、やがて乳房が去り、そこに欠如が生まれる。ラカンによれば、これは想像界に安住するのを禁ずる父の命令を受け入れることであり、社会的な法の要求を受け入れること、社会という言語活動の場に引きずり出されること、自分が全能ではないという事実を受け入れることと同義である。この父の命令にあたるものを、ラカンは、フランス語で同じ発音をもつ2つの言葉「non(否)」と「nom(名)」をひっかけて、父の名と呼んだ。

と、ウィキペディアでは解説している。

「ブラックジャックによろしく」のストーリーの中でも小沢君の父は登場しない。母一人で小沢君を育てたのだろうか?早川さんの両親は離婚。母子家庭で早川さんは15歳で家出すると言う設定になっている。奇しくも物語の中でも「父」は不在なのだ。精神分析の世界でいうところの「父」とは、飽くまで概念上の「父」なのだが、リアルの物語の設定においても、父不在、崩壊した家庭と言う舞台の方が、子どもに過度のストレスがかかった事により発症と言うストーリーがすんなり受け入れられやすいからだろう。

精神発達論を学ぶと、人の心の発達過程において、自我の育成や自己肯定感の獲得には大きく母性が関わることを知る。さて、父の役目はと言うと「社会性」を育む事らしい。更に「象徴界」とは、家族と社会を作り上げている社会的性的役割や諸関係からなる、あらかじめ定められた構造のことと言う解説もある。

だからと言って、母子家庭の子どもは「精神病」にかかりやすいと言う統計学的数値が発表されているわけではない・・・。むしろ、今の日本社会から「父性(ふせい)」と言う「社会規範」「ルール」「規則性」「構成力」の欠如・不足が精神病(統合失調症)の発症の遠因になっているのではないだろうか?そう考えるのは無理があるのだろうか?

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12、おわりに

今回の月刊精神分析は「精神科について知ろう!」と言う事で、「ブラックジャックによろしく 精神科編」を取り上げました。通常、人があまり好んで携わろうとしない領域の話なのですが、話のとっかかりとしてはいのかなと思い紹介しました。その気になれば、少しの操作で、全編をパソコン上の電子書籍として無料で楽しめるのだから利用されてはいかがでしょうか?

ではまた来月お会いしましょう。

月刊 精神分析 編集部A

2013年平成25年04月30日

感想は lacan.fukuoka@gmail.com まで

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13、Webマガジン月刊精神分析&分析家ネットワーク



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