月刊 精神分析

1、はじめに

月刊 精神分析 読者のみなさん、こんにちは。編集部Aです。遅ればせながら新年明けましておめでとうございます。昨年中、日本は、大きな震災や事故に見舞われた大変な年でしたが、今年は復興、復旧がいち早く進む事を念願し、何気ない平凡な日々に感謝し、充実した生活を送れる様に頑張りたいと思います。

さて、今回のテーマは「ツレがうつになりまして。」です。月刊精神分析では、昨年の10月に「ツレがうつになりまして。」を特集しました。私が、たまたま面白そうだと思い、劇場で同作品(佐々部清監督、主演:宮﨑あおい、堺雅人)を鑑賞し、精神分析学的視点から、映画を通して「うつ」を考察した結果を掲載させて頂きました。

映画「ツレがうつになりまして。」には原作本があります。

ツレがうつになりまして。 (幻冬舎文庫) [文庫] 著:細川 貂々(リンク先はAmazon)
(平成21年04月30日 初版発行、平成23年04月10日 13版発行)と
その後のツレがうつになりまして。 (幻冬舎文庫) [文庫] 著:細川 貂々(リンク先はAmazon)
平成21年04月30日 初版発行、平成23年08月31日 15版発行)の2冊です。

リンク先のAmazonの読者レビューは参考になります。うつ病と現在進行形で闘っている人が「ツレうつ」を読んだ感想を書かれています。うつに羅患した人の感覚が少しは汲み取れるかも知れません。

私は、博多から京都に向かう新幹線のぞみ号の車中で読みました。

今号は、原作本の中から興味深いエピソードを引用したいと思います。

平成24年01月31日 月刊 精神分析 編集部A

なお、本サイトの監修をシニフィアン研究所(埼玉県上尾市)の迎意愛先生と。ラカン精神科学研究所(滋賀県大津市)の安情共恵先生にお願いしました。

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2、登場人物プロフィール


ツレ

夫:ツレ(堺雅人)
性格分析:几帳面な性格。劇中では、クレーマーの様なお客様にも、自分の名前は「はしご髙の髙崎です」と説明している。どうでもいいと思うのだが、人の名前だからどうでもいいと言う事にはできないらしい。責任感が強く大変几帳面な性格である。うつ病にかかりやすい典型的性格の人。




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ハルさん

妻:ハルさん(宮崎あおい)
性格分析:お昼寝ができる、大らかな性格である。ツレの稼ぎで生活できているので、漫画は趣味みたいなもの・・とおっしゃる。私からみるとリスクなく好きな事ができるのは羨ましい。しかし、ツレがうつ病を発症し大変な事に・・・



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惟能創理(いのうそうり)
日本初のインテグレーター(精神分析家)
編集部Aのスーパーバイザー 。

1951(S.26)年 埼玉県熊谷市に生まれる
1992(H.04)年 大沢精神科学研究所設立
1992(H.04)年 道越羅漢(みちおらかん)となのる
2008(H.20)年 LAKAN精神科学研究所に名称を改める
2008(H.20)年 惟能創理(いのうそうり)に改名する
著書紹介:
月刊精神分析 2009年01月号 運命は名前で決まる
月刊精神分析 2010年01月号 心的遺伝子論 産み分け法

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迎意愛近影

迎意愛(むかいあい)
精神分析家。シニフィアン研究所(埼玉県上尾市)主宰。1954年和歌山県生まれ
連絡先:signifiant1@gmail.com




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安情共恵近影

安情共恵(あんじょうともえ)
精神分析家。ラカン精神科学研究所(滋賀県大津市)主宰。1958(S.33)年4月22日生まれ。
出身:滋賀県大津市。二女の母。
神戸親和女子大学児童教育学科(兵庫県神戸市)卒業。
会社勤務の後、結婚し専業主婦になる。
二女の子育てに悩み惟能創理先生の精神分析治療を受ける。
インテグレーター(精神分析家)養成講座を受講の後、独立開業。
現在、新進気鋭の分析家として、引きこもり不登校の子供を持つ母親を全力で支援している。
同研究所は「京都府ひきこもり支援情報ポータルサイト」の支援団体として登録。
メルマガ発行:子育てメールマガジン 育児法 引きこもり 家庭内暴力 非行 不登校
連絡先:lacan.msl@gmail.com
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編集部A(へんしゅうぶえー)
月刊精神分析(げっかんせいしんぶんせき)編集部員。
ラカン精神科学研究所福岡支所
1963(S.38)年3月12日生まれ
出身:福岡県福岡市。
コンピューター会社のシステムエンジニア。食品工場の生産管理業務に従事。
飲食店の経営、飲食店の営業職、旅客運送乗務員を経た後、月刊精神分析編集部。
宗教色の強い家庭に生まれ育つ。
二十代の頃、原因不明の疾病に苦しむが転地療法にて完治した経験から、心の作用に興味を持つ。
ひょんな切っ掛けから「精神分析」の世界を知り、約三年半色々な書籍を読み漁る。

現在「月刊精神分析」の編集に関わりながら、惟能創理先生のセラピーとインテグレーター養成講座を受けている。

性格分析:自己分析、コンピューターのSE(システムエンジニア)をしてきただけあって、緻密な作業ができるA型(血液型)人間である。自分の部屋はちらかっていても許されるのだが、漫画本の1巻から・・はきちんと順番通り並んでいないと気が済まない。物事は手順を考えて、1から順番に進めていく。よって「適当にやってみて駄目でした」という事は出来ない人で、やるからには成果が出ないとかっこ悪いと感じ、失敗を恐れるタイプである。
連絡先:lacan.fukuoka@gmail.com

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3、私の疑問

はたしてツレのうつ病は完治したのか?

映画でのラストシーンは、ハルさん(妻)が、うつをテーマにした漫画を出版し、その漫画が多くの人から読まれ、ツレ(夫)は自分で会社を設立し、うつをテーマにした講演会で多くの人の前で[「うつと自分」を語れる様になりました・・・と言う展開で、ハートウォーミングな幕切れとなっている。

その後のツレがうつになりまして。を読むとツレ(夫)は薬の服用はしなくてよくなったものの、サラリーマンに戻る事はなく、自分で会社を設立し、ハルさん(妻)が描く漫画のプロダクションの社長(代表取締役)と言う身分になったとの事。さらに、ハルさんは益々多忙になったので、家事まで熟(こな)す、スーパー主夫(主婦ではない)になり、ハルさんが妊娠出産してからは育児までしていると言う。

これって、辛辣な言葉で言えば、嫁の仕事・・それもうつ病の啓蒙漫画がベストセラー(75万部を出版する:ウィキペディアより)になったおかげで、会社を設立できて、更に、嫁の主婦業や育児・・母親業を肩代わりしていると言う事なのではないか?

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4、うつ病の完治とは?

世間の人達が「うつが完治した」と思うのはどんな状況だろうか?

ある日突然、会社務めしている男性が、突如病に倒れ「入院」もしくは「療養」という事になれば、もといた職場やポストに復帰とまでは行かなくても、体調維持の薬を服用しながらでも、サラリーマン(会社員)として復職・再就職できる状況になるまで健康を回復する事を「うつが完治した」すなわち「社会復帰」、そう「社会復帰」が「うつが完治した」と言える状況であろう。当然、家庭に戻れば父としての役割、夫としての役目・役割も待っている。

そう言う定義をすると、劇中や漫画エッセイ「ツレがうつになりまして。」で描かれているツレは、社会復帰したと言うより、「うつ」を発病する事により、社会に関わる別の手段を見つけた・・もっと言えば、ツレは「うつ」を発病する事により、過去の自分を殺し、新しい自分に生まれ変わったと言えないだろうか?

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5、投企(とうき)とは

ここから精神分析的視点で話が展開していきます。少し難しい言葉が並びますが・・・「投企(とうき)」について説明します。ハイデガーが唱えた言葉です。

以下はネット上のサイトからの引用である。
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ハイデガーとは?:哲学者。マルティン・ハイデガー。フルネーム、"Martin Heidegger"。20世紀のドイツ哲学(と実存主義)にかなり寄与した人。

投企とは?:〔(ドイツ) Entwurf〕ハイデッガーの用語。いつもすでに自己の可能性に向かって開かれている現存在(人間)固有の存在の仕方で、具体的には理解という形をとる。被投性(気分)に対する。
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少し長いが「投企」を説明した文章を以下に掲示する。
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ハイデガーは、人間が世界を構成する純粋意識ではなく、自分が選んだり、造ったりしわけでもない世界に否応なく投げ込まれてしまっている存在であると指摘した。

人間は否応なしにこの世界を生きなければならない。このすべての人間に共通した状態をハイデガーは「被投性」と名づけた。

そして、被投性は、気分(とりわけ、不安)を通して自覚される。

たとえば、日常生活の中でぼっかり空いたエアポケットのような瞬間に、「どうして俺はここにこうして生きているのか?」、あるいは、「やがて死ぬ自分にとって、生きることにどんな意味があるのか?」といった不安を抱えた問いが、誰にも忍び寄る。

このとき、われわれは「どうして自分はここに存在するのか?」という不安から、自分がこの世界に投げ込まれており、ここから決して逃れられないこと(被投性)を自覚せざるをえない。

いったん、被投性を自覚すると、ヒトは、いつか自分が死によって、この世界から強制的に退場させられる事に気がつく。

自分の死を鋭く意識することをハイデガーは死への「先駆的覚悟性」と呼んだ。

この死の自覚からさらに自分の生の意味をもう一度捉えなおし、再構成する試みが始まる。

この試みは「投企(とうき)」と呼ばれる。

ここまでを整理すると、世界の中に否応なしに投げ込まれていた者が、不安を通してそれを自覚し、そこから新たに自分を捉えなおし、新たな生き方を始めるという流れが読み取れる。

死の自覚を通して、人間は自分を新たな可能性に向けて投げ込むことができる。人間は不安を通して被投性に直面させられるが、逆にこれによってはじめて、存在と自由の真の意味が得られるのである。
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(日本実業出版社「絵でわかる現代思想」より)

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6、ツレの精神構造(女性化)

以上の様な事から導きだされる「意味」を考察する。劇中で、ハルさんはこう言いました。「私はツレがうつになった"原因"は何か?と言う事よりも、ツレがうつになった"意味"を考え始めた」と。

精神分析の世界では「人は意味を生きている」と言います。

ハルさんが「うつの意味」を考え始めたのは、精神分析的センスがあると言っていいでしょう。

私が「ん?」と思ったのは、ツレが頭をスキンヘッド(坊主頭)にし、髭(ひげ)を蓄えたという件と、主夫業と育児(母親業)をしていると言う点。

まず1点目のスキンヘッド(坊主頭)の件

劇中で、堺雅人さんが演じるツレは、頭フサフサで、ストレスで脱毛した云々の件はでてきません。単行本中にツレが頭をスキンヘッド化した理由が紹介されています。

ストレスで、髪が白髪になってしまいみっともなくなった。スキンヘッドにすれば更にみっともなくなって、無理に外出しない理由になる。更に、人に会いたくないから理髪店にもいかなくて済む・・と言う理由が紹介されてしました。

合理的な理由な様ですが、精神分析的視点からみると、わざわざ外見を男性化(坊主頭)にする事は、寧(むし)ろ内面、精神性は女性化していると解釈します。

次に2点目の髭(ひげ)の件。

精神分析の世界では、髭をどの様にとり扱うかと言うと、世に髭を蓄えた女性はいませんから、髭は男性性、男っぽさの象徴の様に思われます。しかし、それは飽くまで表面上の事で、むしろ、髭を蓄えている男性の精神性は寧(むし)ろ女性化していると捉えます。ひげは男の仮面に相当し、ひげを蓄えた男性は実は女性的な男性です。

次に3点目、主夫業と母親業の件。

本来なら、ハルさんが行う主夫(主婦)業と育児(母親業)をツレがしているそうです。

これも嫁が漫画家・作家として多忙な為、もともと料理や家事が得意なツレが役割分担を遂行いていると言う合理的な理由が成立する。

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7、母の内在化

こうして、ツレを観察していると、表面上は男性化している様に見えるが、実は外見、そして内面(精神性)も女性化しています。

ここで、母の内在化という事を説明します。

丁度、ラカン精神科学研究所の安情共恵先生が過去にブログで書かれた文章がありましたので、以下に引用します。
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分析家の独り言 61 (心の発達 外在化から内在化へ)

内在化とは外にある対象を心の中にイメージとして定着させることである。
最初、対象は外にある(外在化されている)。

人のものを盗んではいけない、万引きはしてはいけないと教わる。例えば、父がいるときには父の言いつけを守るが、父がいなければ守らない。監視員やお店の人が見ているとところでは盗らないが、見ていなければ盗ってしまう。

これが外在化の段階。

百万円の札束が置いてあるの見つけて、周りに誰も見ている人がいないと、黙って持って行ってしまう。しかし、それでも我々が盗らないのは、それは犯罪であり、してはいけないことだという法律や良心が自分の心の中に内在化されているからである。誰が見ている、いないではなく、自分が自分を見ている。この内在化には長い時間と体験、訓練が必要となる。

これを親子関係に置き換えると、憎らしい父または母が内在化されてしまったなら、現実の父・母が死んでしまっても憎しみ続ける。

憎らしい母がいたが、その母が死んでせいせいした。これは外在化のレベル。

内在化されたものは、現実の母が死んでも殺しても、心の中にいき続け、消えない。分析はこの内在化された悪しきイメージをいかに消去するかである。

その前にそもそも何がどのようにイメージされて内在化されているかが問題となる。

対象関係でいうと、憎しみの母(悪い母)に対する自分とは、母を憎む悪い自分。

この母を憎んでいる自分を抱えていることは、非常に不快。

この不快感に耐えらなくて、現実の憎しみの母を殺せば、自分は憎しみから解放されて楽になると思っているから、殺人にいたる。

これはとんでもない錯覚である。

この錯覚に陥ったのが殺人者であり、精神の発達レベルでいえば、外在化のレベルでとまっていて、内在化の能力が未発達なのである。

我々が人を憎んでいても、それは内在化されたイメージであり、実際の人を殺しても憎しみは消えない、殺人は無意味であると知っているから殺さない。

これが殺人者と正常者を分ける境界である。

この内在化の能力は人間にとって大切である。

我々が最初に内在化を学んだことを証明するのは、母の不在を補う移行対象物であった。
完全ではないが、母を移行対象物に置き換え、これを通して次第に内在化と確立して行く。

この移行期にしっかり学習して完全に内在化までの精神の発達を成し遂げていないと、犯罪者になってしまう。

その時期がわずか二歳。

そんなことも知らず、平気で保育園に預けてしまったのでは、子どもの心は育たない。

※移行対象物:母の特質、例えば柔らかい肌触りの縫いぐるみや、毛布、シーツ、タオルなどを、母の代わりとして子どもが肌身離さず持つ時期かある。これによって子どもは母の不在の寂しさを埋め合わせている。

2008年01月11日 21:48
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8、私の推測

以上の様な事から私が大胆に推測してみます。

これは、劇中でハルさんが考えようとした「ツレがうつになった意味」を私が推測するものです。

ツレは精神分析学の精神発達論上の「母の内在化」が何らかの理由で、できなかったのではないか?それゆえ、仕事がヘビーになって、防衛機制が破綻(詳しくは月刊精神分析2011年10月号の記事を参照)し、今までの自分を投企(自己再構成)しなければならなくなった。その過程で発生したのが「うつ病」であり、投企後のツレは、スキンヘッドになり髭を蓄え、外見上は男性化したのだが、精神構造的には女性化し、更には、自身の社会的立場も主夫業を遂行し、本来は「育児」と言う母にしかできない事を自ら率先しておこなう行動化が具現した・・と推論できないか?

つまり、ツレは母の内在化が出来なかった故、投企して、自分自身が母となった。・・これが大胆な私の推論です。

ここで、もう一つ気になるのは、劇中でも単行本上もツレの両親の話がでてきません。劇中では、ハルさんの実家は理髪店として登場します。ツレの兄は実弟のツレに「頑張れ」を連呼する無関心な兄として描かれています。・・・が、ツレの両親は登場しません。

ツレと、その両親、特に幼少期の実母との関係が気になります。やはり鍵を握っているのは母親だと思います。

推論は飽くまで推論なので、本当にそうなのか?は、ツレさんを精神分析するしかありません。ツレが精神分析(セラピー)受けて、幼少期の家庭環境や家族構成、母との関わり、父との関わりを言語化するしか謎「意味」を解く(解釈する)方法はありません。

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9、まとめ

今月号の月刊精神分析は2011年10月号 ツレがうつになりまして。の続編をお送りしました。

私が映画を見た後に、単行本(原作)を読み「ん?」と引っかかる事があり、推測する過程を記事にしました。

文中、ツレさんをツレ(敬称略)で表現しております。大変申し訳ありません。

私の推測が当たっているかどうか?は永遠の謎ですが、ハルさんとツレさん夫婦の相互理解とお互いの成長があって、今の夫婦の形が成立しているものと思われます。羨ましい限りです。

劇中、ツレが通う病院の中で他の患者が「私がうつになったのは離婚が原因です」とつぶやくシーンがあります。過度のストレスがうつ発症の原因であり、夫婦関係を継続する事が難しい事を表現したシーンでもあり、ツレがうつ状態になっても夫婦関係が継続しているツレとハルさんの夫婦絆を強調するシーンでもありました。

うつを発病したからと言って、その先が必ずしも暗澹(あんたん)たるものものではありません。ハルさんツレの夫婦の様なケースはレアなケースかも知れませんが、他の生き方を選択する人もいれば、会社に復帰する人もいます。

大切なのはやはり意味(シニフィアン)を考える事なのではないでしょうか?日本古来の仏教的な言葉を用いれば「悟り」に通ずる様な事かもしれません。

惟能創理先生のもとで、精神分析家養成講座を受講され、精神分析家として活動されている方々は、精神分析家の呼称としてインテグレーターと名乗っています。心の統合者(インテグレーター)の意味です。

防衛機制が破綻して、身体症状有しているクライアントの心の叫び(無意識)に耳を傾け、破綻した心を再構築していく・・精神分析家とはそういう仕事を担っています。

興味ある方は、下記の精神分析家ネットワークからお近くのインテグレーターに問い合わせをしてみて下さい。

平成24年01月31日 月刊 精神分析 編集部A

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10、付録:養成講座テキストより

参考にインテグレーター養成講座テキストの病理Ⅷ《抑うつ神経症》より一部抜粋引用します。
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抑うつとは

抑うつとは人間の感情障害の一つで、気分が沈み憂うつになり意欲も低下することを指す。それはどうして発生するか。といえば、対象喪失によるのと葛藤などの持続的な負荷によるすなわちストレスが引き起こすといえる。

抑うつは、気分の低下を表わす言葉として、「気分が沈む」、「つまらない」「やる気が起こら(出)ない」というのが日常的に使われる。いわば、無気力、無関心、無感動の「三無」状態こそが抑うつということになる。そしてこの抑うつが症状の中心(核)となる疾患がうつ病である。抑うつはこうしてある種の感情が固定して構成された「憂うつな気分」ということになる。ちなみに感情とはどんなものがあるかみてみよう。次の五つに分類されるだろう。

(中略)

所有の喪失

抑うつは対象喪失によって生じるといった。そして気分障害であり、「悲哀の仕事」も抑うつの代表的なものである。この仕事に失敗したものが憂うつ感が病的に持続して症状となり、神経症へとなっていく。対象喪失により「所有の喪失」が生じ、時間体験がそれまで連続的で順次進行していたものが、その時点で寸断され、止まり、「後の祭り」的取り返しのつかないものとして構成され、存在感をもってしまう。これが巨大な未済だという意識になり、現在、未来が圧迫されてしまうことになる。自我は負目をもち、卑小で無力な状態に追いつめられてしまう。ここでいう「所有の喪失」とは結婚、死別などの近親者との別離、転居、配置転換、昇進などの職場の変化といった慣れ親しんだ人間や環境の喪失である。

抑うつと自我の統合

抑うつを自我の統合の発達から把える観点がある。クライン(Klein,M.)は乳児の3~4か月での対象(母親)とのかかわり方を「妄想分裂態勢」と呼んだ。この時期には、乳児は満足を与えてくれるもの(主に母親の乳房)には「生の本能」を投影し「良い対象」と感じ、欲求不満を引き起こすものは「死の本能」(攻撃性)を投影して「悪い対象」と感じる。そしてこの「悪い対象」は乳児を脅かす迫害不安を生み出すので、それに対して「分裂」、「投影的同一視」などの原始的防衛機制が用いられる。この時期の自我と対象はそれぞれ統合されたものではなく「良い自己」・「良い対象」と「悪い自己」・「悪い対象」に分裂している。

4~6か月になると乳児は「妄想分裂態勢」から「抑うつ態勢」へと移行する。この時期では「良い対象」と「悪い対象」に分裂して経験された対象が一つのものとして統合され、「悪い対象」の部分に向けた攻撃で「良い対象」の部分をも同時に破壊してしまうことを経験し、抑うつや罪悪感が生まれるという。この段階では、自我は愛情と憎しみの両方の感情を同時にもつことができ、現実的に統合されたものとなる。自我の防衛に成熟した防衛である「抑圧」が使用されることになる。成人でのうつ病は、この「抑うつ態勢」への退行が引き起こすと考えられる。
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以上抜粋引用


以下サイトの記述を引用
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対象喪失とは?

かけがえのないものを失うこと。それをどう体験するかが、メンタルヘルスにとっては重要である。愛情や依存対象の喪失(肉親との死別や離別、失恋、子離れ、ペットの死等)、慣れ親しんだ環境の喪失(引っ越し、転校、卒業、転勤等)、身体の一部の喪失(手術や事故等)、目標や自己イメージ、所有物の喪失など、あらゆる事柄が含まれる。時間と共に心が整理されていくプロセスを、フロイトは「悲哀の仕事」と呼んで正常と異常の研究の端緒を開いた。

抑うつとは?

悲しみ、意欲喪失、絶望感、悲壮感、思考制止など、精神的に落ち込んだ状態.
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以上サイトから引用

簡単に言うと、乳児は母の乳房を良い対象として自己に内在化する。その上で、「自我は愛情と憎しみの両方の感情を同時にもつことができ、現実的に統合されたものとなる。」と説かれている。

本稿では、ツレさんの精神分析をしたわけではないので、飽くまで推測の域を脱し得ないが、仕事上のストレス等で・・「対象喪失によって抑うつ状態が発生した」・・とすると、うつ病発生の根本原因は、内在化するべき母の喪失なのかもしれません。

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11、付録 「主夫」と呼ばれる男性

シニフィアン研究所の「愛のブログ 「主夫」と呼ばれる男性」から引用

「主夫」と呼ばれる男性 2012年02月01日

男女平等、男女共生参画、男女雇用均等などと共に
育児も夫婦で分担する
そして「主夫」「夫にも育児休暇」など
様々な変化が出てきている
これらに対する是非を云々するつもりは、まったくない

「主夫」する男性について
精神分析的な観点から考えてみたい

「主夫」とは、女性(妻)がするものだとされてきた
食事・洗濯・掃除などの「家事」そして「育児」
これらを担当する夫のことだと規定される

「家事」「育児」は女性=妻=母がするもの
これが従来の圧倒的な役割だった
つまり
「「家事」「育児」は、母がするもの
それを夫がする
ということは
母の役割を夫がしていることになる
【夫=母】
という図式になる
夫は母になったということを意味する
これは「母への同一化」と呼べる

この観点からどのようなことが見えてくるだろうか?

母が自分が描くような母ではなかった
だから母の良いイメージを取り入れ(内在化)できなかった
それゆえ
自分が母の立場に立って、
自分がしてもらいたかったように世話をする

この視点から
「世話好きな非常に優しい夫」
「何でもよく気がつく夫」
「料理や育児が上手な夫」
これらの姿が浮かんでくる

すべての「主夫」がこのようだとは言うつもりは無いが
この傾向にあることが伺われる

一方
このような「主夫」の妻は
男勝りで、活発、負けず嫌いで、何事にもチャレンジ精神旺盛
いわゆる「やり手」な女性
そんな姿が想像される

性差が平板化してゆく一端には
このような「主夫」も垣間見える気がする

興味をもたれた方は、こちらも参照ください。
「女たちよ賢明であれ!(シニフィアン研究所)」

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Webマガジン月刊精神分析&分析家ネットワーク



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 精神分析(セラピー)を受け、インテグレーター(精神分析家)を目指し理論を学んだ人たちが、東北・関東・関西を中心に実際にインテグレーターとして活動しています。  夏には、那須で恒例の「分析サミット」が開かれ、症例報告・研究などの研修会も行っています。  私たちインテグレーターを紹介します。(敬称略)  メールに関して、☆を@に変換したメールアドレスにメール送信願います(スパムメール対策)

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